呉釗燮外交部長(=外務大臣)が5月12日にイスラエル紙「ハアレツ(Haaretz)」の記者、Jordyn Haime氏から受けたインタビューの内容が17日、「Taiwan Hoping for Closer Defense Ties With Israel, Minister Says」(台湾はイスラエルとの緊密な防衛関係望む-外務大臣)と題されて同紙及びその公式サイトに英語とヘブライ語で掲載された。
呉外交部長はこの中で、台湾とイスラエルが互いに代表処を設置して今年で30年になることに触れ、二者関係は現在安定して進展しているところで、すでに科学技術、医療、教育、金融などの分野で32件に及ぶ協定を結んだと評価、5月3日に締結した「ワーキングホリデー協定」が両国の若者世代の交流をいっそう促進し、相互理解を深められるよう期待した。呉外交部長はまた、今後もイスラエルとの科学技術、医療、教育、農業などでの交流の拡大に努める考えを示した。
呉外交部長は、「経済と貿易、投資は両国の関係にとってもう一つの重点だ」とし、昨年二国間貿易が前年比で大きく増え、台湾がイスラエルにとってアジアで4番目に大きい輸出相手国になったことを指摘。その上で、「台湾とイスラエルはどちらも中国と経済的な往来がある。しかし、それは双方がより密接な関係を目指す上での制限になってはならない」と訴えた。呉外交部長は、中国が国家利益を最大化するため国際ルールや秩序に反する経済活動を行うことをイスラエル政府は警戒し、中国への投資案件に対する選定や審査の仕組みを作り始めたと分析、こうした動きはイスラエルが他の国々とより幅広い経済貿易関係を築くのを助けると指摘した。その上で呉外交部長は、「台湾はイスラエルに非常に適した協力パートナーになれる」と自信を示した。
呉外交部長は、中国は経済・貿易面での関係を他国に影響をもたらすカードや武器にするほか、口実を用いてリトアニア、オーストラリア、カナダ、台湾に圧力をかけたこともあると指摘、民主主義国はすでにこうした現象に気付き警戒しているとし、その例として米国が国際社会に対し、中国の経済成長に潜む問題への注意を喚起していること、ならびに米連邦議会下院のケビン・マッカーシー議長がイスラエルを訪問した際に同様の懸念を示したことを挙げた。
呉外交部長は、他国との関係を拡大しようとする台湾の努力に対して中国は常に圧力をかけ、破壊しようとしているが、台湾はそれによって引き下がったり打ち倒されたりすることは無いと強調。「台湾とイスラエルは共に民主主義国であるほか、台湾は中国に向き合い、イスラエルは周辺の情勢と向き合うなど境遇は似ており、互いを知る人も増えている」として、イスラエルが地域情勢に対応して来た経験は台湾にとっても参考になるとの見方を示した。
また呉外交部長は質問に対し、イスラエルの民間防衛や予備兵制度、科学技術、実戦経験はみな台湾にとって学ぶに値すると回答。国防に関する交流はデリケートな部分があるので、シンクタンクによる交流やトラック2対話(政府ではなく、民間有識者の意見交換などを指す)から始め、機が熟してから政府による訪問団の交流へと進めてはどうかと提案した。呉外交部長はまた、中国は台湾と他国との安全保障面での交流を強く妨害しているとし、「台湾はイスラエルとの友情を大切にしており、イスラエルから自衛の経験を学べるよう望んでいるが、イスラエル側の立場にも慎重に配慮すべきであり、不要な迷惑をかけたくはない」と述べた。
呉外交部長は同時に、台湾はイスラエル人が第二次世界大戦で経験した痛ましい苦難の歴史を深く受け止めており、このため駐台北イスラエル経済文化弁事処及びドイツ在台協会と協力し、「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」記念活動を毎年行っていると説明、今後イスラエルと連携して人権、自由、民主がいかなる「悪意の勢力」による破壊にも遭わないようにしていきたいと強調した。
「ハアレツ(Haaretz)」は1919年に創刊されたイスラエルで最も長い歴史を持つ新聞。現在は同国で発行部数3位の新聞で、英語版とヘブライ語版を出版している。